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箱庭の星

オンラインゲーム「Granado Espada」のラピス鯖にてもっそり開拓中のイリフィカーデ家門が織りなす、新大陸一大スペクタクル(という名の妄想。)
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【エデュ編入記念】常しえの夜の国にて【テラ捏造サーセン;】

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永遠に続く静寂の中、夜なのか昼なのかさえ分からない、
むしろそんな区別さえあったことを忘れたかのようなこの場所で、
ひっそりと息をする俺がいる。

死人だけが存在を許されるこの場所に、
どこか場違いかもしれないが、
まともに生きていた頃のことを一切失っている俺には
似合いの場所なのだろう。



しんとした世界で、失くした記憶の断片をたどる作業は俺の日課だ。

なにか一つでも、俺を構成するものをサルベージできないか。

開拓者というよりはトレジャーハンターやスクラップ屋のような
貪欲さで、俺は必死に何かを思う。

結果はいつも同じで、得られるものといえば、
思い出さない方がマシだった地獄の日々の断片なのだが。


それでもそうしなくてはならない。
強迫観念にも似た何かが俺を突き動かすのだ。
思い出せ!と。


頭痛がする。

記憶を掘り起こすという作業は、
自分の意志で脳髄をかき回す行為に等しい。

冷汗が額を滑った。




ふと、   




              ほんの刹那。




女が微笑んだ。




ハッと目を見開く。そこにあるのは見慣れた生ぬるい闇だけで、
辺りを見回してみても、当然のように俺だけが存在していた。

眩しい。…そう、眩しい。

この痛み、この焦燥感は、
太陽を直視した後、眼の中に残った緑色の影のようだ!
目を閉じてもチラチラとそこにあって、でも決して手で触れることができない。
追い払うことも、己のものにすることもできない、
ただの太陽の影。

つかみたくてもつかめないとは!
俺は今、なにかとんでもなく重要な何かを思い出したかもしれないのに…!

情けないことに、息が上がっていた。
顎に伝っていたものは、汗ではなく涙だった。

本当に、情けない…。


「今日は………もう、休むか。」


誰に言うでもなく、俺は宙に向かってつぶやいた。




*********



ひどく美しい女だった。

俺と女は、どこか広い場所─たとえば、コロシアムのようにも見える
広い場所のような、誰もいない野原にも見える場所のような─で
剣を打ち合わせていた。

金属がぶつかり合う固い音がする。
つばぜり合いになったが、意外と女は粘った。

「さぁどうする。お前は俺より強いが、力は俺に劣る。」

そういう俺の眼をまっすぐ見返してきて、ふっと、また笑う。
そのまま思いのほか強い力で押し返してきた。

俺もムキになって、さらに力を込めて剣を押し返す。
自然、二人の顔が近づいた。

女の長い睫毛も、潤った唇も、すぐ目の前にあった。


(触れてしまえそうだ…。)




思った刹那。


「Lo amo,Eduardo.」


ふいに唇をかすめた薔薇の香り。
何が起こったか理解するのと、俺の脛に激痛が走ったのは
ほぼ同時だった。

「ッ……!!!」

バランスを崩して倒れかける俺の剣を払い落し、女は俺の喉元に
切っ先を突きつけた。


「私の勝ち。」

「…っお前…やってくれたな。」

苦々しい思いで女を見上げれば、俺とは真逆の晴れ晴れとした笑顔で
剣を鞘に納めている。

「お前は戦場でつばぜり合いになったら、どの男にも口づけするつもりか!」

半分は本気の叱責、もう半分は本気の嫉妬で
俺は声を荒げた。
女は、声も大に叫んだ俺に最初目を丸くしていたが、
やがて声をたてて笑い始めた。

「バカね、そんなわけないでしょ!…あ、もしかして妬いてくれたの?」

お約束の台詞を吐かれたが、残念なことに半分は真実で、
俺は返す言葉に詰まった。気まずさで思わず視線を逸らす。


「……ねぇ、エデュアルド。」


どうにも悔しくて、女の呼びかけを無視する。

…我ながら本当に情けない。
まるでゲームに負けた子供ではないか。

「エデュアルド・ヒンギス?」

女が子供をあやすような、慈しみの表情で俺の顔を覗き込んだ。
本当に、美しい女だと、思う。

「私の愛しいエディ、キスしてちょうだい。」

首に回された細い腕を、振り払う理由など無く。

「キスだけじゃいやなの。抱きしめながら名前を呼んで?」

俺のくせ毛にいとおしげに絡まってくる指は、
甘やかなやわらかい針のようだ。
愛おしい気持ちをあふれさせる優しい毒を注ぎ込む、
天使の指だ。

俺は呼んだ。女の名を ─────








名を……?








この女は









誰だろう………





******************


とたん、崩れゆく景色。
溶けていく背景。消え行く腕の中の柔らかい体。



あぁ、消えてしまう!行ってしまう!
行かないでくれ!お願い、行かないで!


「………ッ!!!!!!」





ガバリと上体を起こして、俺は荒い息をついた。
寝ていた、らしい。


夢の中で、まるで恋人か、それ以上のように寄り添った女。
引きとめることは、できなかった。

叫ぶことも、できないのだ。






「お前は、誰だ…?お前の名前が、知りたい……」





常しえの夜の国に、朝日はまだ昇らない。
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箱庭の星について
HN:
イリフィカーデ家
性別:
非公開
自己紹介:
バラックメンバーの名前が、全部某元祖ネオロマのキャラ名だったりするのは中の人の趣味です。万年まったり開拓中につき、まったりなお友達募集中。中の人は社会人→学生なので、暇そうに見えるけどちょっと忙しいですwあまり細かいことは気にしませんが、最低限のマナーは大事よねと思っている今日この頃。
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